2024-01
30
自家製の多い喫茶店
「当店は自家製の多い喫茶店ですのでどうかそこはご承知おきください」
さかもとてらすはもうすぐ1周年をむかえます。長らくとうふ作りを専門としてきたため、カフェの営業はいろいろなところを探りながらの一年でした。
なかなかお店を開けられない中、どんなお店にしようか利用者、職員ともに同じ目線で何度も何度も時間をかけて話し合ってきました。
「やっぱり喫茶店はクリームソーダとナポリタンだよね」
「だったらピザトーストも食べたい」
「タピオカはどうしよう」
「お昼どきは定食が食べたいなあ」
これだけ個性が輝くメンツが集まると一つ決めるのにも、いつだって議論が白熱します。
やっと開店の目途が立ち、それじゃあとコーヒーを淹れてみたところ
…あれ、もう終わり?
それもそのはず、コーヒーメーカーで淹れるコーヒーは粉とお湯を入れてスイッチを押せばすぐでした。
今思うと当たり前なのですが、やっぱりどんなことでもやってみないとわからないものです。
たくさんの工程からなるとうふ作りで長年培ったみんなには、少し物足りないくらいでした。
「もしかしてこれ、自分たちで淹れられないかな」
「いいね、やってみよう」
今は注文を受けてから一杯ずつ豆を挽き、カップを温めて、丁寧にハンドドリップで淹れています。
まずは何人かの利用者がそれらしく淹れらるようになった頃。
「これ、練習したらみんなでできるようになるんじゃないかな」
「そうだね、できるよ」
簡単にできると言ってしまったことを少しだけ後悔するまで、時間はかかりませんでした。
期限が切れそうになったコーヒー豆を安く買ってきて、何度も何度も練習しました。
「なんかみんなトイレによく行くようになったなあ」
練習と試飲を繰り返して、慣れないカフェインでみんなトイレが近くなったりもしました。
みんな夜はちゃんと眠れていたのか、コーヒーの飲み過ぎで胃が荒れていなかったのか。そればかりは一年たった今でも謎が残っています。
淹れては飲んで淹れては飲んで、これならみんな安定した味で淹れられるね、とわかる頃には、誰もが茶店のマスターのような貫禄になっていました。
「アイスコーヒーってどうやるの?」
「え、普通のコーヒーを冷蔵すればいいんじゃないの?」
もちろん、今ではそんな事は言いません。
今では焙煎度の違う豆で淹れた濃いめのコーヒーを急冷して風味を落とすことなく淹れていますが、一年前はあらゆることが試行錯誤の連続でした。
「これって、手作りできるんじゃないかな。」
やってみないとわからないんだし、まずはやってみようの気持ちでいろいろものを作っています。
カラメルから手作りの焼きプリン、チーズケーキ、カフェオレベース、とうふを使ったスコーンに何種類ものスパイスと煮込んだジンジャエールまでいろいろなものが自家製になりました。
さて、次の自家製はなんだろう。
いつだって本当に作れるのだろうかと不安になる気持ちと、ここにも自分たちの手で魂の宿ったものができるのかもしれないと、ワクワクする気持ちが入り混じります。
こんな毎日だから、ゆっくりとしかお店が出来上がりません。
1年経ってもまだまだ未完成。
それでもみんなで作ったみんなのお店がこの場所にあるということを大切にして、横浜の片隅で誰が来ても歓迎されるような、そしてこの街を照らすような場所になりたいと思って、今日もみんなでお店に立っています。
もちろん、この道十数年のとうふ作りも忘れずに、ですが。
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