2024-09
30
カステラを焼かねばならぬ
自家製の多い喫茶店のさかもとてらすでは、これも手作りなんですかと驚かれることが少しずつ増えてきました。ありがたいことです。
その一つにふわふわの台湾カステラがあります。
もとは材料が余ったところからどうしようかと考えたところからでした。
「カステラとか作れるんじゃない、混ぜたり軽量したりとか、みんなとうふ作りでずっとやってたんだし、大丈夫でしょ。」
はじまりは本当に適当な一言だったと思います。
さかもとてらすの原型はとうふ工房として2007年に西谷で始まりました。そこから働いている仲間はもう既にこの道17年を越えるエキスパートです。豆乳を測って、ごまを混ぜて、そんな工程をこれだけ続けているんだから、小麦粉を測るのもメレンゲを泡立てるのも大丈夫でしょ。そんな軽い気持ちは、作ってみてからあっという間に打ち砕かれました。
メレンゲと言っても電動泡立て器の準備もありません。はじめは給食の味噌汁の味噌
を溶かす泡立て器を使って、ヘトヘトになりながらの作業でした。作ってみてはじめて製菓用の泡立て器とは違うことに気がつきました。
慣れない作業と思いの外に消耗する体力でみんな口数が少なくなり、静かなキッチンに泡立て器がボウルにぶつかる音だけが淡々と響いていきました。
もっと早く、もっとリズミカルに、真剣に泡立ての練習をしていく仲間たちの姿は、今にして思うと何かのスポーツに打ち込むアスリートのようなストイックさがありました。
「こうやって卵の黄身と白身を分離して、、、」
「これで牛丼屋でもスムーズに黄身を分けられるね」
などと今では軽口も言えるくらいになりました。
牛丼が大好きな仲間がいつも見ていた卵の白身が、こんなにも泡立ってふわふわになるなんて、こういった機会がなければ知ることもなかったかも知れません。
当初は空気の含ませ方の感覚も難しくて、何人もで交代しながらやっとできたメレンゲも、今ではあっという間に仕上がります。
口に含むと泡立つようにとろける舌触りの秘密はこんなメレンゲの物語にあったのでした。
最近は火曜日に焼いている事が多いです。さかもとてらすから甘い香りが漂っていたときは、もしかしたらカステラを焼いているのかもとお店を覗いていただけると、仲間たちが心を込めておもてなし致します。
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